ヴァイオリン製作者と一言に言いましても、仕事内容は様々です。
新作の楽器を作る人、楽器を修理をする人。
新作と言っても、コンテンポラリー楽器を作る人から、歪みや傷やシミまで再現したオールド楽器のコピー楽器を作る人もいます。
修理と言っても、弓の毛替えから、音の調整、オールド楽器の修復など広範にわたります。
私は新作の楽器を作ることを主な仕事としていますが、中には製作・修理の両方をトップレベルでこなせる人もいます。
製作と修理、「どちらが重要?どちらが大変?どちらが偉い?」などと、たまに議論になったりしますが、もちろん優劣をつけることはできません。
どちらも奥の深い仕事で、ヴァイオリンの世界にとっては大切な仕事です。
さて、4月にドイツ・ベルリンの楽器店で働く素敵な女性の職人の杉本育代さんを尋ねました。
杉本さんが勤めているその工房では、歴史的な名器の修理や修復も数多く行っています。
いつも「本物」に触れられる環境、緊張感をもって仕事に向き合える環境で働いておられることに、心から尊敬の気持ちを抱きました。
修復の仕事は、先人の製作者に敬意を払い、可能な限りオリジナルの状態に復元しなくてはいけません。技術はもちろんの事、経験や実績がなければそういう仕事は任されません。
修復した形跡を残さない事(修理した事が分からないようにする事)が修復の美学だと思いますので、同じヴァイオリン職人でもオリジナリティーを求められる製作の仕事とはずいぶん違います。
先方にご迷惑をかけてはいけないので、私がここでこれ以上の詳細を書く事は控えますが、「本物」を見る重要性を改めて感じました。 (杉本さんについての記事があるようです。こちらをご覧ください。)
ひとりで楽器を作る事が仕事の私にとって、普段はなかなか味わえない刺激的な時間を過ごすことができました。
工房の訪問後に、ベルリンフィルのコンサートに連れて行っていただくなど、本当に楽しい経験をさせて頂けました。
ベルリン、本当に良い街です。また必ず行きたいです。
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