ふだんヴィオラを主に作っていますが、少し前に久しぶりにヴァイオリンを作りました。
私は「普通のヴァイオリン(ヴィオラ)」を目指して楽器を製作しています。
「普通のヴァイオリン」という言葉は私が以前、恩師の山田聖氏から頂いた金言です。
ヴァイオリンは伝統的な楽器でありながら、強烈に製作者の個性が表に現れる楽器です。
違う製作者が、同じフォルムと同じ寸法で同じ楽器を作ろうとしても、必ずそれぞれの製作者の個性(クセ)が反映された全く違うヴァイオリンが完成します。
「普通」と「個性」これらは一見相反するように感じます。
しかし、自分にとっての「普通」を追求する事が、ナチュラルな造形美を伴った「本物の個性」として形になるのだと思います。
個性は作り出すものではなく、にじみ出るものなのです。
伝統的でありながら個性的で美しいヴァイオリンを作ってきた過去の多くの名工達も、それを個性的なものに作り上げようと思っていたのではなく、自身にとって普通で当たり前の事をしていたに過ぎないのだと思います。
もちろん「普通」の答えは簡単にはでませんが、そういう思いで作ったヴァイオリンです。
人から見たら「個性的なヴァイオリン」、自分からしたら「普通のヴァイオリン」です。
松上一平