先日、イタリア・クレモナを訪れました。
目的は、ヴァイオリン博物館で特別展示されているストラディヴァリ「メシア」を見に行くためです。(普段はイギリスのオックスフォードの博物館が所蔵)
メシアは傷も少なく、ほぼ完全なオリジナルの状態のストラディヴァリであるとされています。
そして、色んな意味で最も有名なストラディヴァリかもしれません。
色んな意味というのは、真贋論争等、様々な話題に事欠かないヴァイオリンだからです。
真贋について、鑑定家でもない私が軽率な発言はできないのですが、製作者として一度は実物をみてみたいと思っていたヴァイオリンでした。
実際メシアを見て、素直に「素晴らしいヴァイオリンだな~」と思いました。
メシアは状態がとても良いので、いわゆる「オールド楽器のストラディヴァリ」とは印象が違います。
品の良い「新作」をみている感じです。一見派手さはありませんが、良い意味で「究極に普通のヴァイオリン」だと思いました。
私のような製作者にとっては教科書のようなヴァイオリンです。
メシアが良いヴァイオリンであることに疑いの余地はないので、ストラディヴァリが作った本物かどうか、そんなことはどうでも良い事だと思ってしまいます。
特別展ではメシア以外でも、ヴィヨーム(フランス)の1800年代のヴァイオリンが3台あり、いずれも本当に素晴らしい楽器でした。
今まで何度もクレモナの博物館には足を運びましたが、特別展としては今まで来た中で一番充実していたと感じました。
その後、フィレンツェのアカデミア美術館にも行きました。
アカデミア美術館にはストラディヴァリ「メディチ」があります。
アカデミア美術館には有名なダビデ像がある為か、2時間も並び中に入り、ようやく「メディチ」に出会えました。
ため息が出るほどの美しさでした。ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとにかくどれも本当に素晴らしい。
300年以上も前にこれほどのものが作れた事に改めて驚かされます。
今回は「メシア」「メディチ」に加え、この時期クレモナで毎年行われている楽器の展示会「モンドムジカ」でも2日間過ごし、観光もせずひたすら楽器を見る旅になりました。
本当に充実した時間が過ごせました。
追伸
弦楽器専門誌「サラサーテ(Vol.73)」 で、僭越ながら「メシア」についてコメントさせていただきました。メシアの特集記事になっています。是非お求めください。
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